株主総会の書面決議、みなし決議とは?株主総会の開催を省略する方法を解説

会社法319条にてみなし決議(書面決議とも呼びます。以下みなし決議)の定めがあり、株主総会の目的事項について株主全員が同意する場合は株主総会の開催を省略し、目的事項を可決する株主総会の決議があったものとみなす規定です。みなし決議の内容や適用して株主総会の開催を省略するための手続きについてご説明します。

会社法319条(株主総会の決議の省略)

取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす

株主総会の目的である事項について

株式の発行会社(以下、株式会社)は株主に対して報告すべきや決議すべき事項を定めて株主総会で株主に報告し、決議が必要な事項について株主総会の決議を取ります。

「株主総会の目的である事項」とはこの株主総会で報告、決議すべき事項のことを指しています。「株主総会の目的である事項」は報告事項決議事項の2種類があります。

株主総会の報告事項

株主総会の報告事項は、株主総会を通じて株主に報告する事項です。主な報告事項は計算書類(連結計算書類を作成している会社は連結計算書)・事業報告及びその附属明細書です。これは会社法438条で定められており、1年間の事業活動や業績について報告することが定められています。

みなし決議において報告事項を書面または電磁的記録で株主に通知し、当該事項を株主総会に報告することを要しないことについて株主全員から同意が得られた場合は報告事項については報告したものとみなされます。(会社法320条)

株主総会の決議事項

株主総会の決議事項は、株主総会を通じて株主からの決議を必要とする会社の意思決定事項です。通常は株主総会にて会社法で定める普通決議特別決議特殊決議の手続きを経て意思決定します。

みなし決議において決議事項を書面または電磁的記録で株主に通知し、株主全員から同意が得られた場合は決議事項については可決したものとみなされます。

株主全員の同意

会社法319条では株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員の同意が必要と定められています。この株主全員とはかっこ書きにあるとおりに株主総会の目的事項について議決権を行使することができる株主を指しています。例えば普通株式と一部の株主に議決権制限株式を発行している場合、普通株式を所有する株主全員の同意があればみなし決議は成立します。

したがって、株主総会の成立日はすべての株主の同意が得られたタイミング(すべての同意書を入手した)タイミングとなります。

書面または電磁的記録

みなし決議を成立させるためには株主から書面または電磁的記録にて同意の旨を入手します。電磁的記録とはメールや株主名簿システムをはじめとしたシステム上の同意記録になります。

これらの株主の同意の記録は会社法319条2項の規定で株主総会の決議があったものとみなされた日から十年間、その本店に備え置かなければならないとされています。

みなし決議の手続き

みなし決議の具体的な実務上の進め方について解説します。みなし決議の進め方は以下の通りです。

  1. 株主総会提案書の作成と送付
  2. 株主からの同意書の入手
  3. 株主からの同意書の保管
  4. 株主総会議事録の作成
  5. 株主や債権者からの開示請求に対する対応

株主総会提案書の作成と送付

みなし決議を実施するためには株主総会の招集通知の代わりに株主総会提案書と同意書を株主に送付します。提案書と同意書について定まった書式はありませんが株主総会の目的事項回答日を明示することが望ましいです。特に、みなし決議はすべての株主の同意が得られたタイミングが決議の成立日となるため、コントロールするために日付については注意が必要です。決議事項の効力発生日を確定したい場合は、例えば「本決議事項の効力発生日は〇年〇月〇日です。」と決議内容に効力発生日がいつであるか記載しましょう。

また、本提案書と同意書の送付は電磁的方法でも成立します。そのため、例えば電子メールやクラウド株主名簿システムを通じて提案書や同意書を共有することが可能です。

【参考】株主総会提案書の様式(クラウド株主名簿システム「Shares」より)

【参考】株主総会同意書の様式(クラウド株主名簿システム「Shares」より)

株主からの同意の入手

株主からの同意書を回収します。対象のすべての株主から同意を得られないと株主総会の目的事項が成立しないため、必ず漏れがないようにすべて回収します。

株主の同意を示す方法は書面または電磁的記録が認められています。そのため、メールやクラウド株主名簿システムを通じた意思表示でも成立します。

株主の同意の記録は株主総会の決議があったものとみなされた日から十年間、その本店に保管する必要があります。後述する株主や債権者からの開示請求があった際に提出できるよう保管しておきましょう。

株主総会議事録の作成

みなし決議を実施した場合、株主総会の開催は省略されますが、株主総会の目的事項についてみなし決議を実施して可決したことを記録として残すために株主総会議事録の作成が必要になります。

 

株主や債権者からの開示請求に対する対応

株主及び債権者は、株式会社の営業時間内はいつでも、株主の同意の書面または電磁的記録の閲覧又は謄写の請求をすることができます。(会社法319条3項)

このような請求があった場合は、保管している株主の同意の記録を開示する必要があります。

まとめ

株主総会のみなし決議について解説させて頂きました。株主全員の同意が必要なため、実務上のハードルが高い手続きですが、株主の数が少ない場合は株主総会手続きを簡略化することができるため自社のケースに応じて利用を検討ください。

クラウド株主名簿システム「Shares」を用いるとシステムの画面に従って簡単にみなし決議の手続きを実施することが可能です。

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